認知症の進行?それは体調不良のサインかもしれません
介護の現場にいると、時折「あれ?」と思うような出来事に遭遇することがあります。特に、連休明けなど、少し間が空いてから利用者様の様子を見た時に、その変化に驚かされることがあります。今回は、認知症の方の急な変化と、その裏に隠された体調不良の可能性についてお話しします。
急に見られた大きな変化
先日、連休明けに出勤したところ、いつもは無口ながらもご自身の足で歩いてトイレに行かれていた、笑顔が素敵なおじいちゃんの様子が一変していました。なんと、車いすに座り、明らかに鼻声で鼻水を垂らしていたのです。さらに、スタッフに話を聞くと、トイレの認識ができなくなり失禁が続いているとのことでした。そして、食事もあまり進まず、歯磨きさえも自分でできなくなっていました。その申し送りでは「認知症が進行しています」とのことでした。しかし、本当にそうなのでしょうか。
認知症の進行と決めつける前に
一見すると、これは認知症が急激に進行したかのように見えます。ですが、私たちはまず別の可能性を疑う必要があります。それは、体調不良です。実際に、そのおじいちゃんは常に鼻水が出ており、夕食も半分しか食べられませんでした。一方で、体温を測ってみると平熱でした。このように、熱がないからといって体調が良いとは限らないのが、特に高齢者の難しいところです。そのため、私たちは「認知症が進んだ」と安易に判断するのではなく、「何か身体の不調があるのではないか」という視点を持つことが非常に重要になります。
体調不良が認知症の症状を悪化させる理由
では、なぜ体調不良が認知症の症状に影響を与えるのでしょうか。例えば、風邪や感染症、脱水、便秘、あるいは身体のどこかの痛みなど、身体的な不調は本人にとって大きなストレスとなります。その結果、睡眠不足や食欲不振につながり、脳の働きが低下してしまうことがあります。これが、一時的に認知機能が低下し、症状が悪化したように見える原因の一つです。特に、レビー小体型認知症などでは、自律神経の乱れから体調の波と症状の変動が密接に関係することもあります。このように、身体の不調と認知症の症状は、相互に影響し合っているのです。
日々の観察で気づけるSOSのサイン
だからこそ、私たち介護者は日々の小さな変化を見逃さない観察力が求められます。バイタルサインはもちろんのこと、食事の量や水分を摂る量、排泄の状況、表情の曇り、普段と違う言動など、これらはすべてご本人からの大切なSOSサインです。今回のケースでも、トイレへの誘導に反応して排泄ができたことから、全く認識ができないわけではないことが分かりました。したがって、注意深く関わることで、ご本人の状態をより正確に把握することができるのです。
見過ごされがちな口腔ケアの重要性
そして、体調不良の時に特に注意したいのが口腔ケアです。体調が悪いと、歯磨きがおろそかになりがちです。しかし、お口の中に食べ物のカスがたくさん残ったまま寝てしまうと、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクが非常に高くなります。高齢者の場合、寝ている間に唾液を飲み込むだけでも誤嚥性肺炎になる可能性があるため、口腔内を清潔に保つことは命を守る上で極めて重要です。スタッフがきちんと介入し、ケアを行っていたかどうかの確認も必要不可欠です。
まとめ
認知症の方の急な変化は、必ずしも認知症そのものの進行だけが原因ではありません。むしろ、その裏には身体的な不調が隠れていることが多々あります。私たちはそのサインを見逃さず、速やかに医療と連携することが大切です。日々の丁寧な観察とケアが、利用者様の穏やかな生活を守ることに繋がるのです。



