御荷鉾スーパー林道となんもく村の隠れ家「ちょっとしたcafe」へ

日常の喧騒から離れ、心揺さぶる冒険と、心安らぐ癒やしを同時に体験したい。そんな贅沢な願いを叶えるために妻が選んだのは、関東最長を誇る天空の回廊「御荷鉾スーパー林道」を駆け抜け、その先にある緑深き山村、南牧村(なんもくむら)にひっそりと佇む古民家カフェ「ちょっとしたcafe」に行ってきました。

天空の回廊「御荷鉾スーパー林道」とは

まず、この旅の主役である「御荷鉾スーパー林道(みかぼスーパーりんどう)」についてご紹介します。群馬県藤岡市の神流湖(かんなこ)付近を起点とし、西へ向かって南牧村に至るこの道は、総延長が約67.1kmにも及び、関東地方では最長の林道として知られています。その名の通り、御荷鉾山系の尾根沿いを縫うように走るため、まるで空の中の廊下を走っているかのような絶景が続きます。

もともとは林業の振興や地域の開発を目的に建設された道ですが、今ではその圧倒的なスケールと景観から、多くのツーリングライダーやドライブ好き、サイクリストを魅了するプラチナルートとなりました。

ここで少し補足ですが、「スーパー林道」という名前は「すごく険しい林道」という意味ではありません。かつての国の計画で、通常の林道よりも道幅が広く、大型車も通行できる高規格な林道として整備されたことを意味します。そのため、全線走破には相応の準備と注意が必要ですが、路面が比較的フラットなダート区間も多く、オフロード初心者からベテランまで、それぞれのレベルで楽しめる懐の深さも魅力の一つです。舗装路と、合計で20km以上にもなる未舗装のダート区間が混在し、走るほどに道の表情が変わっていく、まさに冒険心をくすぐる道なのです。

絶景のプロローグ 神流湖から始まる東ルート

旅の始まりは、埼玉県との県境に広がる雄大な神流湖から。国道462号線から分岐し、いよいよ御荷鉾スーパー林道へと入っていきます。序盤の数十キロメートルは、比較的走りやすい舗装路が続きます。人工林の中を抜ける穏やかなワインディングロードは、これから始まる冒engraved into the landscape.

この東側ルートでぜひ立ち寄りたいのが、道中に突如現れるユニークなモニュメントです。古くから霊峰として崇められてきた御荷鉾山への信仰の証として建てられた、高さ5mほどの金属製の「鉾(ほこ)」。その姿から、ライダーたちの間では親しみを込めて「御荷鉾のエクスカリバー」と呼ばれています。深い森の中にそびえ立つその姿は、まるで異世界への入り口のようで、絶好の写真撮影スポットです。ここを過ぎると、いよいよ冒険の核心部へと近づいていきます。

オフロードの真髄 根を走る爽快ダート体験

みかぼ森林公園のエリアに差し掛かると、道の様相は一変します。アスファルトが途切れ、いよいよこの道のハイライトであるダート区間が始まります。タイヤが砂利を掴む感触、静かな森に響くエンジン音、そして木々の間を吹き抜ける爽やかな風。五感が研ぎ澄まされていくのが分かります。

御荷鉾スーパー林道のダートは、比較的フラットで走りやすい区間が多いのが特徴です。そのため、オフロード走行に慣れていない方でも、慎重に進めばその楽しさを十分に味わうことができます。しかし、場所によっては石が大きかったり、雨の後でぬかるんでいたりすることもあるため、油断は禁物です。

そして、このダート区間の最大の魅力は、何と言ってもその展望です。尾根沿いを走るため、左右に遮るものがなく、息をのむような大パノラマが次々と現れます。

特に「展望台」と名付けられたスポットは必見です。標高1,400mを超えるこの場所からは、60以上もの山々が見渡せると言われ、眼下には上野村のスカイブリッジ、遠くには浅間山や八ヶ岳、条件が合えば北アルプスの山々まで望むことができます。まるで、苦労して登った山の頂から見る景色そのもの。しかし、ここは車やバイクで来ることができるのです。運が良ければ、雲海が広がる幻想的な光景に出会えることもあります。

春には芽吹いたばかりの木々が目に眩しく、夏は深い緑と青い空のコントラストが美しく、秋には山全体が燃えるような紅葉に包まれます。そして、空気が澄み渡る冬には、遠くの山の稜線までくっきりと見通せます(ただし、冬季は閉鎖されるため注意が必要です)。どの季節に訪れても、その時だけの特別な景色が待っています。

旅の目的地へ 緑深き南牧村に佇む「ちょっとしたcafe」

絶景のダート走行を心ゆくまで堪能し、御荷鉾スーパー林道の西側の終点、南牧村へと下りていきます。周囲の景色は、荒々しい山の稜線から、穏やかで緑豊かな山村の風景へと変わっていきます。

南牧村は、標高800mから1,400m級の山々に囲まれた、自然豊かな美しい村です。村内には数多くの滝が点在し、「滝の里」としても知られています。そんな静かな村の、大日向(おおひなた)という地区に、私たちの旅の最終目的地「なんもく村のちょっとしたcafe」はあります。

県道から少し坂を下った場所に佇むそのカフェは、一見すると普通の古民家。しかし、この場所には特別な物語があります。ここは、少子高齢化が進む南牧村を農業から元気にしようという「草木萌動(そうもくめばえいずる)」というプロジェクトの活動拠点なのです。村内外の人々が交流し、村の魅力を発信する場所として、この古民家を改装したカフェが生まれました。

ただのカフェではない、村の未来への想いが詰まった場所。そう知ると、これからいただく一杯のコーヒーや一皿のランチが、より一層特別なものに感じられるはずです。

古民家で味わう、心づくしの旬の恵み

引き戸を開けて中へ入ると、木の温もりに満ちた、落ち着いた空間が広がります。長い道のりを走ってきた心と体が、ふっと解き放たれるような優しい雰囲気です。

このカフェの看板メニューは、ランチタイム(11:00~14:00)に提供される「傳ごはん(でんごはん)」です。南牧村で採れたばかりの旬の野菜をふんだんに使った、創作田舎料理のプレートで、その内容は季節によって変わります。一つ一つ丁寧に作られたお惣菜は、どれも野菜本来の味が濃く、滋味深い美味しさ。長旅で疲れた体に、優しく染み渡っていきます。

そして、もう一つのお楽しみが、手作りのスイーツです。沖縄の伊江島産黒糖や、地元の平飼い卵など、こだわりの素材を使って作られるケーキや焼き菓子は、どれも優しい甘さが特徴です。特に、ある訪問者が「美味しすぎた」と絶賛したという自家製プリンケーキや、北海道産クリームチーズを使ったしっとり濃厚な黒糖チーズケーキは、ぜひ味わっていただきたい逸品です。

オーガニックコーヒーや、南牧村産のブルーベリーを使ったジュースなど、ドリンクメニューも充実しています。窓の外に広がる穏やかな山の景色を眺めながら、美味しい食事とスイーツをいただく時間は、まさに至福のひとときです。

旅の記憶を深める 南牧村の寄り道スポット

「ちょっとしたcafe」で心もお腹も満たされたら、もう少しだけ南牧村を散策してみてはいかがでしょうか。この村の豊かな自然を象徴するのが、数々の美しい滝です。

特におすすめしたいのが、「南牧三名瀑」の一つに数えられる「線ヶ滝(せんがたき)」です。高さ約35mの黒灰色の岩肌を、まるで白い一本の線を描くように水が流れ落ちる姿は、ダイナミックでありながら繊細で、思わず見入ってしまうほどの美しさです。滝の近くには駐車場があり、螺旋階段で滝壺の近くまで下りることもできるので、ぜひその迫力を間近で感じてみてください。

御荷鉾スーパー林道で雄大な自然を体感し、カフェで人の温かさと土地の恵みに触れ、最後に美しい滝で心を清める。そうすれば、この旅の記憶はさらに深く、色鮮やかなものになるでしょう。

まとめ 最高のルートと最高の目的地を巡る、忘れられない一日

天空の回廊、御荷鉾スーパー林道。その道を駆け抜けた先で出会う、温かな古民家カフェ。この旅は、スリリングな冒険と心安らぐ癒やしという、二つの異なる喜びを繋ぐ、完璧な物語です。

ダート路を駆け抜ける高揚感、展望台から見た息をのむような大パノラマ、そして「ちょっとしたcafe」で味わう、心と体に染み渡るような優しい食事。そのすべてが合わさって、忘れられない一日が完成します。

この旅は、車やバイクを走らせることが好きな方だけでなく、美しい景色を求める人、美味しいものが好きな人、そして日常から少しだけ抜け出して特別な体験をしたいと願うすべての人におすすめです。

ただし、この素晴らしい体験をするためには、一つだけ重要なことがあります。御荷鉾スーパー林道は、自然の中にある道です。冬季の閉鎖はもちろん、大雨による崩落などで、予告なく通行止めになることがあります。また、「なんもく村のちょっとしたcafe」も不定休の日があります。出発する前には、必ず公式サイトなどで最新の情報を確認することを忘れないでください。準備を万全にして、最高の冒険へ出かけましょう。

あなたの冒険のためのクイックガイド

カテゴリー詳細
ルート名御荷鉾スーパー林道
総延長約67.1km
起点・終点藤岡市(神流湖)~南牧村
路面状況舗装路と未舗装路(ダート約20km以上)の混合
主な見どころ神流湖、御荷鉾のエクスカリバー、みかぼ森林公園、展望台
目的地のカフェなんもく村のちょっとしたcafe
カフェの名物傳ごはん(旬の地元野菜ランチ)、手作りスイーツ
おすすめの季節新緑の春、紅葉の秋 ※ただし年間を通じて道路状況の確認は必須
最重要アドバイス出発前に必ず公式サイトで林道の通行止め情報と、カフェの営業日・時間を確認してください。

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